10.希望への行進 −Farewell Party−(前編)

(1)

月日は流れ――。
西暦2199年。

青く美しかった地球は、ガミラスからの遊星爆弾によって、赤く焼け爛れ、変わり果てた姿になっていた。
地上の生命を奪った放射能は、人々がようやく逃れた地下をも侵食し始め、ついに地球は死の宣告を受けたのだった。

人類滅亡の日まで、およそ1年――。
人々は絶望の淵に立たされ、嘆き、悲しみに暮れた。

しかし、そんな中にあって、最前線で戦う兵士や軍関係者、科学者やエンジニア達、そして訓練学校の若者達は、決して希望を失ってはいなかった。
わずかでも生き延びる可能性がある限り――。

事実、地球は、希望の光を見出していた。

古代進と島大介――宇宙戦士訓練学校でトップを争っていた訓練生の二人が、火星に不時着した宇宙船の異星人女性――残念ながら既に死亡していたが――から、通信カプセルを持ち帰った。
それはイスカンダルという星の女王・スターシアからのメッセージの入った通信カプセルであった。

それによると――。

イスカンダルには放射能を除去できる装置、コスモクリーナーDがあり、それで地球を救えるという。
しかし、残念ながらそれは地球に搬送はできない。
が、同送データ内の設計図にある波動エンジン、波動エネルギーを活用したワープ航法、そして地球においては未知の武器を搭載させた宇宙戦艦を新造さえすれば、遥か14万8千光年(往復29万6千光年)の航海が、地球滅亡のタイムリミットまでに可能だというのである。

地球は、女王スターシアの好意に賭けた。

地球防衛軍は「ノアの方舟」的存在となるはずだった宇宙船を急遽、改造にかかった。あるゆる方面から有能な科学者、エンジニアが集められ、急ピッチで新型宇宙戦艦の建造が行われた。
そして極秘裏に調整がなされ、その艦と運命を共にする乗組員達の人選が行われていた。

希望の艦の名はヤマト――宇宙戦艦ヤマト。


(2)

加藤三郎と山本明の名も、宇宙戦艦ヤマトの艦載機「ブラックタイガー」のパイロットとして、乗艦名簿に、そろって記載されていた。
近く二人は、地球の人類の命運を背負い、必ず生きて戻らねばならない過酷な宇宙の旅に出る。

訓練ではなく、既に実戦にも駆り出されるようになっていた二人の元に、神倉涼が、ある日、ひょっこりやって来た。

「よお!涼じゃねえか!よお〜く出て来れたなァ!」

驚く加藤に、涼はニヤッと笑って見せる。

「へへ。コネクションの勝利だね。」
「おい、おまえ何者なんだよ?」

山本が呆れたように言った。

「おまえ、いくつンなったんだっけ?」
「14。」
「見違えたじゃねえか。」

加藤は腕組みをしながら、少し大人びた涼を見て、満足そうに深く頷いた。

「おまえ、オッサンだな。」

山本が呆れたように頭を振った。

「でも涼。ホントに見違えたよ。すっかり、いいオンナになっちまって。」
「やまもっちゃんもオッサンじゃん。」

涼に言われて山本は憮然とした。

お互いの近況を一通り話した後で、涼がぽつりと言った。

「もうすぐ発つんでしょ?」
「ああ。5日後だ。」

山本が、ややうつむき加減に答える。

「そう、か……。」

少し淋しげな涼。

何だか湿っぽくなりそうな空気を払拭するように涼は顔を上げて微笑んでみせる。

「私さ。もう大丈夫だから。ちゃんとやっていけるから。」

加藤と山本は顔を見合わせ、ニッと笑って親指を立てた。

「そう言えばなァ。例の特別機なァ、古代のヤツに持って行かれちまった。」

ふと、口惜しげに加藤が話を切り出す。

「零式52型……コスモゼロのこと?」
「おいおい、おまえよく知ってるなァ。」

試作の戦闘機の正式名を、さらっと言ってのけた涼に加藤は目を丸くした。

「ふふん。コネクションの勝利だね。」

またもや涼は、そう答えると胸を反らした。

「おいおい。おまえ何者だよ!?」

加藤が素っ頓狂な声を上げ、山本が肩をすくめる。

「古代の野郎、よりによって俺の直属の上司なんだぜ!!クソったれ!!」

鼻を膨らませて吐き捨てるようにいい放つ加藤。
吹き出す山本。

「コスモゼロってヤツはエンジン出力と加速性能じゃ、俺達の乗るブラックタイガーよりも上なんだ。しかもかなりのジャジャ馬とくる。」
「へえ。すごくクセのある機ってこと?」
「ああ。かなりの戦闘能力を必要とするんだ。古代のヤツ、あのジャジャ馬をなんなく乗りこなしやがンだから大した野郎だぜ。」

山本が古代を褒めるので、加藤は面白くなさそうだった。

「ちっ!たまたま、あのジャジャ馬と古代の相性が良かっただけなんだよ!」
「サブちゃん、相変わらず負けず嫌いだね。」

山本は涼と顔を見合わせて肩をすくめた。


10.希望への行進 ー Farewell Party ー (前編) 終了